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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

祖父母と蜂

髙橋朋希

 

 祖父母の家に遊びに行く度に、私は人間と蜂の奇妙な関係性を感じる。祖父母は、孫の私が大学生になった今でも、農業を営んで過ごしている。文字通り、数分前は畑に生えていた野菜が食卓に並び、春は菜の花、夏にはキュウリ、秋や冬には葉物野菜が並ぶので、台所を見るだけでも、四季を当てることが出来る。そんな祖父母の生活に潜む知恵は、いつでも目を見張る。特に蜂に関しては枚挙に暇がない。
 ある初夏、私は祖父に連れられ、畑の奥の木に向かった。蜂を見に行くのだという。確かに、そこには成長途中ともうかがえる蜂の巣があり、わずかながら成虫の飛んでいるのが見えた。祖父は、申し訳ないが農作業に支障が出るからと、その巣の一部を切り落とした。小学生の私には、その様子があっけからんと映って見えたが、断面に見える白くうごめく生物に動揺を隠すことはできなかった。家に帰ると、今度は祖母がその幼虫をフライパンの上で転がし始めた。生まれて初めて見る光景は、私の常識を隅々まで更新していった。次にその物体が動いたとき、それは舌の上を転がっており、私は初めて「はちのこ」という料理があることを知った。海ほどに豊富でない山間で、不足しがちなタンパク質を摂る側面もあるということを聞き、人間が「与えられる」存在であることを痛感したのである。
 しかし、人間も「与える」存在であり、ひいては生態系の一部であるという認識を持つのにも時間はかからなかった。高校や大学で生物学や生態系を学んでいたとき、はちみつに関する研究に触れる機会があった。蜂は、自身の成長のために花の蜜を利用するが、一方で花も種の保存のために蜂を利用して受粉に持ち込むということを知った。一部には、蜂と7割以上の植物は、どちらが欠けても絶滅するという予想もあるほどであった。
 その中には、人間が育てる植物の名前もある。つまり、農業と蜂とは、切っても切れない関係、生態系も絶妙な関係性をもっているということを学んだのである。このことを知ってから初めて祖父母の家を訪れた時、私はさらにあることに気づいた。祖父母においては、日々「雨にも負けず」のような生活をしており、滅多に菓子など食べないのであるが、それでも糖分が欲しいというときには、ハチミツを入れるのだという。保存がきくと同時に、花の香りを楽しめることがその理由なのだそうだ。私は、祖父母の生活を通して、私たちの生活がいかに絶妙な関係の下に存在しているかを痛感できたのである。

 

(完)

 

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